スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

若い証券マン


 今さっきインターホンがなった。僕は2階の書斎で仕事をしている。インターホンの受話器は1階にしかない。階段を駆け下りて出ると、証券会社のセールスマンだった。
 うちには証券会社のセールスマンがたまに訪れる。1階まで駆け下りて、セールスマンだと分かるとがっかりするが、それも運動だと考え、なるべく横柄にならないようにしている。というのも証券会社のセールスマンは大抵新入社員で、とてもおどおどしているのだ。
 今日のセールスマンは若い男性だった。昨日は同じ証券会社の女性がやってきた。別の証券会社も、この1年で2人来た。ひとりは男性、ひとりは女性である。みな若い。

 何度も来るので、仕事がないときには相手をすることもある。それで色々と話を聞いた。ある証券会社のセールスウーマンとは、特に話し込んだ。というのは、相当な美人であったからだ。
 その子は有名女子大を出て、某大手証券会社に入社して2年目の女性だ。仕事にとても燃えているという。化粧もちゃんとしていて一見派手目だが、中身は相当しっかりとしている。高校時代は新体操、大学ではコーヒーショップのバイトに明け暮れていたそうだ。新体操でもそれなりの成績を残し、コーヒーショップでは、そこは世界的なチェーン店だが、バリスタの大会があり、神奈川県で優勝だか準優勝をしたそうだ。何でも一生懸命に取り組むタイプだ。今は証券業務の仕事と勉強に打ち込んでいるという。
 その子に聞くと、せっかく大手の証券会社に入社しても、1,2年で半分ぐらいは辞めるそうだ。そうだろう、と思う。
 飛び込みで住宅街を回るのはしんどい。僕はなるべく不遜にならないようにしているが、それでも忙しいときには、インターホンで「忙しい」とはっきり断る。あの女の子に聞いたが、1日100件ぐらいまわって、話を聞いてもらえるのは5軒程度だという。昼食はどうしているのかと聞くと、パンを買って公園のベンチで食べているという。雨の日はと、尋ねると、傘をさして食べるらしい。冬は寒く、夏は蚊に悩まされる。
 今まで大学で、コンパだ旅行だと遊びまわっていた大学生が、厳しい就職戦線を勝ち抜き、やっと入った大手の証券会社。しかし仕事は外回りの営業で、インターホンで冷たいあしらいをうける。そりゃ、辞めるだろう。

 今の若い子はこれだけの就職難の時代であるのに、1,2年でかなりの率が会社を辞めてしまうらしい。証券会社でなくても、どこも仕事は厳しい。世間の風に当たれば、ひ弱な心と体である。一時退却したくなるのも無理はない。
 僕はこの子たちの諦めの良さを責める気にはなれない。むしろ辞めて当然だと思う。若いとはそういうものだし、仕事を選択することは、とても難しいことだからだ。
 むしろ問題は企業にある。人材の流動性の悪さに問題があると思うのだ。
 日本の企業の美質に終身雇用がある。僕もこの制度には賛成だ。しかしドロップアウトしてしまった人にも、同時にチャンスをもっと与えて欲しい。いや最近は転職者を採用する企業も増えているではないかと、反論される方もいるかもしれない。しかし同じ会社がまた同じ人を採用することはないだろう。これも励行して欲しいのだ。
 とくに若い人には。冷たい雨の中、公園でパンを食べていて、突然会社を辞める決心をしてしまった子に、もう一度チャンスを与えて欲しい。もしその子が、もう一度その会社でやり直したいと考えた場合は。
 きっとその子は、前に益して意欲的に働くはずだ。

 別の会社に転職する場合も、同じだ。1,2度の転職者には今の企業は寛容であると思う。しかし3度、4度となると別だろう。そんな子は、どうせまたうちの会社も辞めてしまうだろうと判断して、採用を控えるだろう。しかし20代は特別対応で良いのではないだろうか。30代になっても、腰が落ち着かないのは、それは明らかな欠陥だ。しかし20代ならば、それは人生の模索であると考えて欲しい。
 僕も最初の会社は1年で辞めた。次に入った新聞社は結局20年以上勤めたが、それはたまたまの偶然である。実は新聞社に入社して2年目あたりで、一度会社を辞めると上司に訴えたことがある。その時は上司に諭されて、残ることにした。さらにもう一度は、会社に内緒で大学院を受験したこともある。落ちてしまったので、会社を続けたが、受かっていたら辞めていた。みな20代の頃の話だ。
 あの若い証券マンたちは、何を思いながら仕事をしているのだろうか。

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめtyaiました【若い証券マン】

 今さっきインターホンがなった。僕は2階の書斎で仕事をしている。インターホンの受話器は1階にしかない。階段を駆け下りて出ると、証券会社のセールスマンだった。 うちには証券会社のセールスマンがたまに訪れる。1階まで駆け下りて、セールスマンだと分かるとがっ...

コメント

Secret

今は若い社員に忠誠心を求めるのは無理だし、我慢せよというのも無理。
運動会や旅行もなくなり社員寮も消え。宴会も稀です。彼らは縛られたくない。
だって会社は守ってくれないから。昔は会社や上司の横暴に耐えれば、
会社はちゃんと一生面倒見てくれたけれど、今は簡単に解雇される。
会社と社員の関係はますます薄く冷たくなりますね。

私は若くして外資系金融機関に出たので、結構転職してます。
というか職は変わらず、会社を変わっただけですが。
個人宅に突撃することはありませんが、いまだに電話で
面識のない企業の財務担当者にいきなり電話したりもしますよ。
たいていみごとに断られます、かなりの確率で。でもまあ慣れっこです。
繰り返せばなんとかなります。経験と売るべき金融プロダクトがあればなんとか。

Re: タイトルなし

おちゃさんへ

僕は会社を辞めてしまって、若い人と仕事でかかわる機会がなくなっていますが、そんな感じですか。きっと色々な人がいると思いますが、傾向としてそうなんですね。

営業は新聞社時代に少しだけかじりました。たしかにセールスは商品に大きく依存しますね。良い商品なら、顧客に喜ばれますが、悪ければ、せっかく買っていただいた顧客を裏切ることになりますし。

山本
プロフィール

山本 拓也

Author:山本 拓也
職業:翻訳者
過去の職歴:HSBCを経て産経新聞社
家族:妻、フクちゃん(猫オス 3歳)、大吉くん(猫オス 2歳)
住まい:逗子

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。