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 『わたしの日本語修行』(ドナルド・キーン)を読んで


 『わたしの日本語修行』(ドナルド・キーン)を読んだ。東京外大教授の河路由佳が聞き役に、キーン氏の日本語習得過程をインタビューし、一冊の本にまとめたものだ。
 キーンは太平洋戦争中、19歳で海軍日本語学校に入学し、わずか11か月で日本語をマスターした。その習熟度合いは、行書をも解し、日本兵の日記を解読することもできた程だ。
 米軍が日本語学校を戦前、戦中に開校した目的は、日本情報の取得、暗号の解読、捕虜への尋問のためだ。キーン氏はたった11か月の集中学習で、これらハイレベルの担務をみごとにこなした。

 この本を読んだのは、もちろん自分の英語学習のためだ。何か参考になるのではと考え、手に取った。
 インタビュアーの河路氏は、「特別な環境で、特別な人がこなせたことだ」、といった意味のことを書いている。
 我々、現代の日本人英語学習者と、キーン氏などとの違いは、やはり特別な環境ということにあるだろう。もちろん、僕自身だけと比較すれば、特別な人ではないことも、理由ではある。しかし、今の日本だって、語学の才能がある人はいるだろう。しかしわずか11か月で、無から英語の達人になるひとは、皆無だ。やはり最大の要因は、特別な環境ということだろう。
 では特別な環境は何かと言えば、当然、戦争なのだが、学習者だけにスポットライトを当てれば、それは意欲だろう。何が何でも、短期間で学ぼうという学習意欲だ。
 キーン氏をはじめ、クラスメートはしかし、敵国日本を打ち負かす気持ちで勉強をしたかというと、それはゼロであったという。日本文化や文学を愛し、純粋な知識欲から学んだという。そうだろう。強いられては、本来の意欲はでない。内から湧き出ずるパッションこそが、最大のエネルギーなのだ。
 キーン氏は白洲次郎と何かの会議で同席をしたことがあるという。白洲のことを、みごとなブリティッシュイングリッシュを使うと評している。
 夏目漱石の英語はまた、完璧であるという。
 両氏は戦争とは直接に関係はなく、英語を習得した。両氏とも才能に恵まれていたことは疑いないが、それと同時に、強い意欲が結果をもたらしたのだろう。

 キーン氏は海軍日本語学校を卒業して、語学兵(将校)になったそうだ。語学兵という言葉は初めて目にした。日本軍にも、そういった専門兵はいたのだろうか。仮にいなかったとしたら、闘いの結果は、初めから見えていたことになる。

 大日本帝国のことは、この際は、どうでもいい。問題は自分である。はたしてパッションはあるのか。これも結果から推して、自明のことだ。
 「Festina Lente」というラテン語がある。英語だと、「Make haste slowly」。日本語だと、「急がば廻れ」。しかし「急がば廻れ」は原語に忠実でないような気がする。英語を直訳すれば、「ゆっくり急げ」だ。つまり粘り強く、取り組めという意味だ。
 才能もガッツもない僕は、これで、気長にやっていこうと思っている。
 

コメント

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パッション欲しいね

たしかドナルド・キーンさんはNYのコロンビア大学でも学ばれていたと思いますが、同校のEast Asian Libraryを見てもアメリカの東洋文学に対する懐の深さが良くわかります。源氏物語に感銘を受けて日本語に興味をもたれるなど、我々日本人でも及びもつかないきっかけはすばらしいと思いますし、自己の無知を恥ずかしいと思います。

Re: パッション欲しいね

太郎様

ずっとブログを見ずにいて、コメントに気づきませんでした。遅くなって、申し訳ありません。
太郎さんはコロンビアにいたことがあるんでしたね。キーンさんは先輩なんですね。
キーンさんの本を読んで思いましたが、語学というのは才能が大きいです。残念ながら、僕にはそれがないことを痛感させらえました。
プロフィール

山本 拓也

Author:山本 拓也
職業:翻訳者
過去の職歴:HSBCを経て産経新聞社
家族:妻、フクちゃん(猫オス 3歳)、大吉くん(猫オス 2歳)
住まい:逗子

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